事業所得税(≒法人税)の対象となる所得について

 事業所得税(Tax on Profit、≒法人税)の対象となる所得については、カンボジア税法(Law on Taxation)第7条に「事業者(Enterprise)による全ての活動から稼得された所得」が事業所得税の課税所得であると規定されています。この全ての活動の所得には、資産の譲渡益や、利息、有形資産及び無形資産の使用料他財務活動や投資活動からの収益が含まれると、同条に規定されています。また、事業所得税に関する経済財政省令(Prakas on the Profit Tax)第2.2条第3項第a号で、「当該課税期間期末の株主資本の金額と、当該課税期間期首の株主資本の金額の差額から、全ての追加の資本取引を除いたもの」と規定されており、いわゆる資本等取引を除いた全ての損益取引が、事業所得税の課税所得を構成する旨、規定されており、カンボジア税法第7条の「全ての活動から稼得された所得」という定義を補足しています。
 上記のカンボジア税法第7条の規定においては、「事業者(Enterprise)」の定義が重要になります。なぜなら、ある者が事業者に該当するのか否かが、この事業所得税の対象となるか否かの重要な要件の一つとなるからです。
 上記の「事業者」の定義に関連して、カンボジア税法第3条第7項に「事業(Business)」の定義が、「事業とは、ある者による、資産の製造及び販売、役務の提供、資産の賃貸及び譲渡その他の取引から収益を得る事を目的とした経済活動(Economic Activity)」と規定されています。また、この定義中の「経済活動(Economic Activity)」の定義として、カンボジア税法第88条にて、「経済活動とは、ある者による、収益を得る目的で、他の者に対して、資産の販売又は役務の提供を行うことによってなされる、反復的(Regular)、継続的(Continuous)又は時々(Occasionally)行われる活動」と規定されています。
 カンボジア税法や省令の規定ぶりは、用語の使用について統一が不十分で不明瞭な点がありますが、「事業」を行う者が「事業者」であり、「事業者」の行う活動から稼得された全ての所得が、資本等取引を除き、全て事業所得税の対象であるとの解釈が出来ます。そして「事業」の定義は、前掲のとおり、「時々」を含むなど幅広く、将来的に税務当局の事業所得税の運用方針が変わり、現在は特に申告が実務として求められていない所得についても、課税がなされる余地があります。例えば、コンドミニアムの区分所有権を購入、賃貸し、賃貸収入を得る場合等についても、この賃貸収入を事業所得税の対象として、税務登録が求められる可能性があります。

カンボジア税務当局へのVAT還付申請手続

 輸出を主な事業内容とする事業者、QIPの認定を受けた事業者、繰越仮払VATが連続して3ヶ月以上発生した事業者は、仮払VATの還付申請をする事ができます。申請は、毎月のVAT申告書に還付請求額を記載する欄があり、そこに記載し申告書を提出する事によって、行うことができます。
 上記での還付請求後、税務署よりVAT還付請求前税務調査の通知(Notification of VAT Refund Audit Visit)が届き、関連資料の用意が求められます。関連資料の内容には以下のようなものがあります。
・ 輸入税関申告書
・ 輸入関税納税証明書
・ 期末在庫表
・ 在庫表
・ 該当期間の月次申告に添付された仕入一覧及び売上一覧
・ 経費及び売上請求書
・ 該当期間のVAT申告書
・ 輸出税関申告書
 還付までの期間について、税法では還付申請月の翌月末迄に還付を行わなければならないとされていますが(Article 41, Paragraph 3, Sub-Decree on VAT)、実務上は、還付の前に上記の税務調査が行われる為、現実には運用されていません。
 該当期間の月次VAT申告にて申告されている仮払VATについて、国内仕入あれば税法上の要件を満たしたVATインボイス、輸入であれば輸入税関申告書の原本を保持している事が還付を受けるための最低限の条件となります。
 なお、繰越仮払VATが連続して3ヶ月以上発生した事業者については、税法上は還付を受ける資格がありますが、現状税務当局は輸出事業者やQIP認定事業者の方を優先して扱っているようです。

カンボジアでの税法違反への罰則 ②刑事罰

 カンボジア税法上、税法上の刑事犯については、経済財政大臣の承認のもと、租税総局長は検察当局への刑事告発を行わなければなりません(カンボジア税法第134条)。但し、この規定は後述の税務職員による税法違反には適用されません。
 以下にカンボジア税法が規定する刑事犯を列挙します。

・ 脱税
 カンボジア税法127条に規定する脱税にあたる行為を行った者やその代理人。
 1千万リエル以上2千万リエル以下の罰金若しくは1年以上5年以下の懲役又はその双方

・ 税法執行に対する妨害
 カンボジア税法128条に規定する税法執行に対する妨害にあたる行為を行った者。
 5百万リエル以上1千万リエル以下の罰金若しくは1ヶ月以上1年以下の懲役又はその双方

・ 幇助及び教唆
 他の者に対してカンボジア税法上の刑事犯にあたる行為を故意で幇助したり教唆したりした者。
 自らがそのカンボジア税法上の刑事犯にあたる行為を行った場合と、同じ刑罰が科せられる。

・ 秘匿情報の漏洩
 カンボジア税法94条に規定する秘匿情報の漏洩を行った者。
 5百万リエル以上1千万リエル以下の罰金若しくは1ヶ月以上1年以下の懲役又はその双方

・ 税務職員による税法違反
 税法執行にあたり、自身の立場を利用して、納税者等から金銭や何らかの便益の供与を受けた者、正当な理由なく徴税行為を行ったり試みたりした者等。
 5百万リエル以上1千万リエル以下の罰金若しくは1ヶ月以上1年以下の懲役又はその双方

 以上の刑事犯のうち、特に脱税と税法執行の妨害については、行政罰の適用要件と刑事罰の適用要件が同じであり、刑事罰が懲役刑も含む重いものとなっている事を考えると、非常に問題が大きいと考えられます。

カンボジアでの税法違反への罰則 ①行政罰

 前回触れましたとおり、カンボジア税法上、税法への違反について、その違反の性質や程度により、過失(Negligence)、重過失(Serious negligence)、脱税(Tax evasion)、税法執行の妨害(Obstructing the Implementation of Tax Law)の4つの種別が定められておりますが、今回は罰則規定について、説明します。

・ 過少申告加算税 (Additional Tax for Underpayment of Tax)
 納税額が過少であった場合の加算税について、その違反が過失による場合は、過少であった金額の10%が加算税となります。また、その違反が重過失による場合は、過少であった金額の25%が加算税となります。(過失及び重過失の要件については、前回コラム参照)
 また、申告の問題等により、税務署の決定により税額が決定した場合(Unilateral Tax Assessment)は、過少であった金額の40%が加算税となります。
 また、上記いずれの場合でも、納めるべきであった月の次月の月初から起算して、月2%の延滞利息が課されます。

・ 延滞加算税、無申告加算税 (Additional Tax for Late Tax Payment)
 納期限迄に納付されなかった場合は、延滞加算税として、納めるべきであった税額の10%が課されます。また督促状(A reminder letter of notification for tax collection)を受領後、15日以内に納付がされなかった場合は、納めるべきであった税額の25%が課されます。また、申告納税がなされなかった結果、税務署の決定により税額が決定した場合は、その決定された額の40%が加算税となります。
 また、上記いずれの場合でも、納めるべきであった月の次月の月初から起算して、月2%の延滞利息が課されます。

・ 税法執行の妨害にかかる加算税 (Additional Tax for the Obstruction of the Implementation of Tax Law)
 税法執行の妨害(Obstructing the Implementation of Tax Law)にあたる行為を行った場合は、申告納税方式(Real Regime System of Taxation)の納税者については、2百万リエル(約500ドル)、推計課税方式(Estimated Regime System of Taxation)の納税者については、50万リエル(約125ドル)が加算税として課されます。
 この税法執行の妨害については、納税者については適切な会計記録やその他証憑類の保管等を怠った場合等9つの要件が税法上定められてはおりますが、現在税務当局により非常に幅広く解釈、適用されており、最も指摘を受けやすい罰則のうちの一つとなっています。

 以上はいずれもいわゆる行政罰にあたるものですが、次回は、主に刑事罰について説明したいと思います。

カンボジア税法上の税法違反の種別

 カンボジア税法上、税法への違反について、その違反の性質や程度により、過失(Negligence)、重過失(Serious negligence)、脱税(Tax evasion)、税法執行の妨害(Obstructing the Implementation of Tax Law)の4つの違反の種別が定められています。

 過失(Negligence)は、次の2つの場合について、過失であると定められています。
1. 納税額が、税法上納めるべきであった税額と比較し、10%を超えない範囲で、過少である場合
2. 税法で定められた期限迄に納税申告がなされない場合

 重過失(Serious negligence)は、次の場合について、重過失であると定められています。
納税額が、税法上納めるべきであった税額と比較し、10%超過少である場合

 脱税(Tax evasion)は、納税額を無くす又は少なくする目的で、意図的、計画的かつ反復して行なわれる違反行為(willful, knowing or systematic and repeated violation of tax provisions with the intention of reducing or eliminating the tax amount)、と定められています。また、上記の重過失に該当する行為が、次の2つに該当する場合も、脱税と定めています。
1. 重過失に該当する行為を、3暦年以内に2回行った場合
2. 重過失に該当する行為を、期間に関わらず、3回以上行った場合

 税法執行の妨害(Obstructing the Implementation of Tax Law)は、納税者だけでなく、税務職員についても定められており、納税者について9つの要件、税務職員については3つの要件があり、いずれかの要件を満たす事で該当します。また、例示列挙であるので、これらの要件に限らず、税法執行の妨害と判定される可能性があります。詳細については、紙面の関係で、割愛を致しますが、納税者については、適切な会計記録やその他証憑類の保管及び請求書の発行を怠った場合、会計記録やその他証憑類の税務職員への提供を怠った場合、等があり、税務職員については、納税者からの承認その他正当な理由なく(個人情報等の)秘密情報を漏らした場合、課税や徴収を妨害した場合、等が定められています。

 上記の4つの違反の種別について、その取扱いや罰則の規定が税法にあり、次回以降説明していきます。

カンボジア税法上の滞納手続

 カンボジアにおいて、納税者が税金を納期限までに支払わず滞納した場合の、税務署による納税の請求、滞納処分の手続きがカンボジア税法に規定されています。

 納税者が税金を納期限までに支払わず滞納した場合には、税務署は督促状(Reminder letter of notification for tax collection)を納税者に送達し、納付を督促します。また、税務署は税務調査等の結果、追徴課税等を行う更正通知書を納税者に発した時は、発してから30日以内に、その更正の内容について、徴収部門(Tax Arrears Collection Office)に通知しなければなりません。また、納税者は督促状の内容に不服がある場合には、税務署に対して異議申立をする事が出来ます。

 納税者が、督促状を受領してから15日以内にその税金を完納しない場合は、税務署は納税者の財産の差押及びその財産の換価手続等の滞納処分の執行に入る事が出来ます。税務署は、財産の差押の際には、税金の徴収に必要な財産以外の財産は差し押さえる事が出来ません。カンボジア税法が定める滞納処分には、納税者の保有する銀行口座の凍結、税関による輸出入手続の停止及び輸出入物品の差押、納税者が受けている行政庁からの許認可の取消等が含まれます。また、税務署はその差押財産を換価する時には、公売に付さなければなりません。
 
 以上の滞納処分の執行手続においては、滞納者の財産の調査の目的で、滞納者の事業所や住居等の捜索等が行われる事が考えられます(カンボジア税法第111条第1項にて、税法上の差押の定義として、”confiscation by all means”と規定されています。)が、税法上、特に裁判所の令状や許可等は要求されておりません。



カンボジアでの税務における行政救済手続き

 カンボジアにおいての追徴課税、その処分に対する不服申立、訴訟等についての手続法が、カンボジア税法(Law on Taxation)に規定されております。
 
 税務当局は、税務調査等の結果、追徴課税を行う場合には、課税額等を記載した更正通知書(A letter of notification for tax re-assessment)を納税者に送達しなければなりません。納税者は通知受領後、30日以内に承諾するか、不服申立を行うかを税務署に回答しなければなりません。不服申立を行う場合には、異議申立書(A letter of protest)を更正通知書受領後30日以内に税務署に提出します。30日以内に異議申立書の提出がなかった場合には、承諾したものと看做されます。
 
 税務署は異議申立書を納税者から受領してから60日以内に、当該申立について、棄却するか、処分の取り消し等の変更を行うか、決定しなければなりません。納税者に当該決定を通知する際には、決定の理由も附記しなければなりません。

 納税者が上記の決定について、なお不服があるときには、30日以内に租税仲裁委員会(Committee of Tax Arbitration)に審査請求をする事が出来る規定となっております(カンボジア税法第122条)。しかし、現時点(2015年6月現在)で租税仲裁委員会は存在しておらず、まだ当該規程は運用が始まっておりません。

 また、税法上、租税仲裁委員会によってなされた裁決について、納税者がなお不服がある時は、裁決の通知書を受領してから30日以内に、裁判所(Court)へ訴えを提起する事が出来ます(カンボジア税法第124条)。訴えを提起する際には、訴えの対象である処分における課税額及び加算税、延滞利息に相当する金額を、国庫に供託しなければなりません。

 以上はカンボジア税法上での税務署による追徴課税を受けた場合の不服申立に関する概略ですが、租税仲裁委員会は未設立で、税務訴訟も殆ど行われていない現状があり、税務当局の徴税能力の強化にあたっては、これらの納税者の権利を守る制度の運用も重要と考えられます。

カンボジアの事業所得税(法人税)での主な損金不算入項目

 カンボジアの事業所得税(法人税)での主な損金不算入項目として、交際費や源泉徴収漏れにより負担した源泉税、罰金、引当金、支払利息等があります。

以下、控除(損金算入)が制限されている費用について、説明していきます。

● 交際費
娯楽や遊興と一般に考えられている活動及びそれらの活動の手段として発生した費用について、は控除できません(カンボジア税法(Law on Taxation)第19条第1項)。それらの活動には、顧客等の為に負担した、個人旅行費用やレストランでの食事費用、宿泊費用が含まれます(Prakas on the Profit Tax 第5.6条第6項)。

● 源泉徴収漏れにより負担した源泉税
税法上源泉徴収を義務付けられている源泉税を源泉徴収せず、自己負担にて納税した源泉税は控除できません(Prakas on the Profit Tax 第5.10条第4項)。源泉税は、課税対象の費用の支払側が負担するものではなく、収益として受け取る側が負担するものである為、費用の支払側が経費として控除はできません(Prakas on the Profit Tax 第5.7条第3項)。

● 罰金
加算税、延滞利息等の罰金は控除できません。主な控除が出来ない罰金には、加算税、延滞利息、関税に関わる罰金、経済法・競争法の規定による罰金、刑法罰としての罰金等があります(Prakas on the Profit Tax 第5.10条第1項)。

● 引当金・資産評価損
引当金については、費用発生の事実や債務額の確定等、経費として控除が認められる為の一般的要件を満たしていない為、控除できません(Prakas on the Profit Tax 第5.2条第1項)。
貸倒引当金については、国内銀行や預金取扱機関については、認められています(Prakas on the Profit Tax 第2.7条第1項)。
会計上計上された資産評価損についても、売却や除却等により損失が実現しない限り、控除が認められません(Prakas on the Profit Tax 第7.1条第4項第c号)。

● 支払利息
支払利息については、同課税年度中に計上された受取利息と、受取利息及び支払利息考慮前の課税所得の50%との合計額に、損金算入が制限されています(Prakas on the Profit Tax 第5.9条第6項)。従いまして、当期受取利息の発生が無く、かつ欠損(赤字)である場合は、支払利息の控除は全く出来ません。

以上が主な控除が制限されている費用ですが、事業において必要性が無いと考えられるあらゆる費用について、控除が認められない可能性があります。

カンボジアの法人税計算においての損金計上について

 カンボジアの法人税にあたる事業所得税(Tax on Profit)の税率は法人については20%ですが、この20%を乗じる対象である所得の金額が大きければ大きい程、税額は大きくなります。この所得は、年度中の売上等の収益(益金)から、売上原価や販売費及び一般管理費等の費用(損金)を控除する形で計算される為、控除できる費用が多ければ多い程、税額は少なくなります。ですので、いかに税金計算上、控除できる費用を増やすかどうかが、税額を少なくする上で重要です。裏返せば、いかに控除が認められない費用を減らしていくか、が重要となります。
 カンボジア税法(“Law on Taxation”)第11条第1項は、この税務上控除できる費用についての総則的規定となっており、「税務上控除できる費用は、当該課税年度中に、事業を行う目的で、支出され又は発生した費用を含む」と規定されています。また、事業所得税に関する経済財政省令(“Prakas on the Profit Tax”)の第5.1条では、税務上控除できる費用として3つの要件を置いており、①当該課税年度中に支出され又は発生した費用である事、②事業を行う目的で支出され又は発生した費用である事、③会計上資産の増加又は負債の減少を伴わない事、と規定されています。
 上記は税務上控除できるかどうか(損金算入できるかどうか)についての原則であり、費用の種類によって、さらに控除できるかどうか、またいくらまで控除できるか、が定められております。
 カンボジア税法第19条は、この控除できない費用(損金不算入項目)についての総則的規定となっています。ここでは、以下の5つが規定されています(便宜上一部省略しています)。
1.一般に遊興、娯楽と考えられている活動又はそのような活動に関係するものの利用に対して発生した費用。
2.従業員個人や家族の生活の目的で発生した費用。但し、給与税の対象となるフリンジベネフィットを除く。
3.事業所得税又は給与税の規定により課税された税金。
4.税法上の関連者との間で行った資産の譲渡取引から、直接又は間接に、発生した損失。
5.既に発生しかつ納税者が費用の額及び事業目的である事を証明できる費用以外の一切の費用。
 次回は個別に損金算入が制限されている項目について、見ていきたいと思います。

カンボジアの法人税 (Tax on Profit、事業所得税)

 カンボジアにも日本と同様に事業所得税(Tax on Profit)という法人税にあたる税金があります。企業の1年間の儲けに対して、税率を乗じて計算する仕組みになっているのも日本と同じです。カンボジアでは税務上の年度(課税年度)は原則1月~12月になっていまして、その場合3月末迄に前年度の所得及びそこから事業所得税額を計算し、申告及び税金の納付を行う決まりとなっています。
 税額計算の元となる企業の1年間の儲けの計算は、いわゆる簿記がベースになっています。カンボジア税法第6条第2項では、収益は支払のタイミングにかかわらず稼得された時点で記録すること、と規定されており、会計記録は日本と同様、発生主義ベースである必要があります。
 カンボジアの年次事業所得税申告書(Annual Profit Tax Return)では、上記の会計上の利益から、さらに調整を行って、税務上の利益である課税所得を計算し、この課税所得に法人であれば20%、個人事業者であれば、0%~20%の累進税率を乗じ、税金が計算されます。もし、その年赤字で利益が出ていない場合は、多くの場合、年次申告に伴う納税は発生しないか、少額となります。
 カンボジアに特徴的なのは、前払事業所得税(Prepayment of Profit Tax)という、毎月税金を前払いする制度があることです。これは毎月、翌月15日迄に前月の売上の1%を納税するもので、前払いですので、年次申告時に計算された事業所得税額から、すでに前払いされている分として差し引くことができます。但し、もし差し引く対象である事業所得税額が無かったとしても、この前払分が還付される事は無く、ミニマム税として確定します。従いまして、カンボジアでは利益が無くとも(赤字であっても)、売上の1%は最低、税金として発生するため、売上額が大きく、利益率が低い業態には不利と言えます。
 1年間の利益に対して税金がかかるという理解で間違いありませんが、会計上の利益と税務上の利益である課税所得は少々異なります。例えば、飲食費用や遊興費用は会計上は費用ですが、税務上は費用と認められない為、そこで会計上の費用と税務上の費用(損金)で差異が出ます。その他にも寄附金や支払利息、会社負担で支払った源泉税、引当金等、全額もしくは一部が税務上費用と認められない費用があります。この税務上認められない費用が大きくなればなるほど、税務上の利益(課税所得)が大きくなり、支払うべき税額が大きくなります。
 課税所得に税率を乗じて算出された金額から、前述の前払事業所得税、利息受取時等に差し引かれた源泉税額、外国税額等を差し引き、最終的な納税額が算出されます。
 この事業所得税の税額を抑えるためには、費用発生時には請求書や領収書等のエビデンス(取引証憑)を残しておく事、源泉税は自社負担では支払わない事等々、日々のマネジメントが重要になります。
 事業が軌道に乗り、利益が大きくなればなるほど、必然的にこの事業所得税額も大きくなっていきますので、気を払う必要があります。

カンボジアのフリンジベネフィット税の免税ルールが公表されました

 2015年1月20日に経済財政省より、”Circular on Implementation of Obligation to Withhold Tax on Salary and Tax on Fringe Benefits”が公表され、工場に勤務する労働者が受け取るいくつかの給付について、フリンジベネフィット税の免税のルールが公表されました。

免税の対象となる給付として、以下の6点が挙げられています。
1.労働法により定められた通勤手当及び住居手当又は工場敷地内にある社宅提供
2.食事手当(残業食事手当を含む)、但し条件が役割や職階を問わず同じである場合
3.法令により定められた範囲内の国家社会保険基金及び社会福祉基金
4.健康保険及び生命保険の保険料及び保険金、但し条件が役割や職階を問わず同じである場合
5.労働法により定められた託児所費用負担又は託児所手当
6.労働法により定められた雇用の終了に伴う退職金及び解雇補償金
 
 本Circularは既に施行されておりますが、例えば「工場に勤務する労働者」のうちの「工場」の定義が規定されていない等、免税対象となる要件が不明確で解釈が困難である点が多々あります。
 解釈上重要な点は、縫製業の労働者に対する労働法上の法定手当である、通勤及び住居手当(月額7ドル)、残業食事手当(残業時に日額2,000リエル)、雇用者による託児所費用負担又は託児所手当等を踏まえている点です。現状の税務当局の見解は上記の免税については、基本的に法定手当の範囲内に限っているようです。唯一例外的に、食事手当は残業食事手当以外についても、平等に支給する事を条件に、免税としています。
 また他方で、同じく縫製業の労働者に対する法定手当である、皆勤手当(月額10ドル)、勤続手当(勤続年数に応じ2~11ドル)については、本Circularに免税対象として規定されておりません。カンボジア税法第44条第3項には「労働法に規定する社会保障的性格を持った追加的給付」については給与税を免除する旨の規定があり、本Circularに記載のないこれらの手当についても、この規定に該当すると解釈できる余地はありますが、税務当局は明確にしておりません。
 また、上記の法定手当は縫製業の労働者に対するものですが、本Circularは縫製業に限定をしていない為、縫製業以外の業種の「工場」で法定と同額の通勤及び住居手当が支給されていても、それは法定手当といえず、本Circularの免税対象となるのか、明確ではありません。
 今後、本Circularに関連する細則の発表が待たれます。

カンボジアでの企業の税務登録手続に変更がありました

 2014年10月9日にカンボジア経済財政省租税総局(General Department of Taxation, Ministry of Economy and Finance)より「税務登録に関する省令」 “Prakas on Tax Registration”が公表され、企業の税務登録について新しい制度が導入されております。

 上記省令での税務登録の制度変更についての主なポイントは以下です。

1. 租税総局のウェブサイトから登録申請(E-registration)が可能となる(税務署窓口での書面での登録申請も引き続き可能)
2. 税務登録申請書や税務登録証の様式の変更
3. 代表者の租税総局窓口での指紋・顔写真登録が必要(2014年10月20日公表の「税務登録及び企業情報更新に関する通達」”Notification on Tax Registration and Company Info Update”にて要求)
4. カンボジア国内での居住証明(地区役所(Sangkat Office)で申請・入手)の提出が必要
5. 税務登録完了迄の所要日数が、租税総局のウェブサイトからの申請の場合は1~7営業日、税務署窓口での申請の場合は7~10営業日
6.  2014年11月1日前に税務登録を行った全ての納税者について、登録情報更新手続を要求
 上記の6については、既存の全ての企業に対し、税務登録情報の更新を要求するもので、新規登録と同様に、代表者の租税総局窓口での指紋・顔写真登録等も要求されております。

 また、2015年1月9日に租税総局より公表された「パテント税(税務登録税)の申告と納付に関する通達」では、2015年度税務登録(パテント)更新について、先にこの登録情報更新を行う事が求められており、3月末の更新期限の猶予も特に認められておりません。また、この通達では、事業内容毎の税務登録(パテント)が必要である事、異なる州や特別市(プノンペン市等)に存在する支店については別の税務登録(パテント)が必要である事(同じ州や特別市に存在する支店については不要)が再度確認されております。