税務当局は、税務調査等の結果、追徴課税を行う場合には、課税額等を記載した更正通知書(A letter of notification for tax re-assessment)を納税者に送達しなければなりません。納税者は通知受領後、30日以内に承諾するか、不服申立を行うかを税務署に回答しなければなりません。不服申立を行う場合には、異議申立書(A letter of protest)を更正通知書受領後30日以内に税務署に提出します。30日以内に異議申立書の提出がなかった場合には、承諾したものと看做されます。
税務署は異議申立書を納税者から受領してから60日以内に、当該申立について、棄却するか、処分の取り消し等の変更を行うか、決定しなければなりません。納税者に当該決定を通知する際には、決定の理由も附記しなければなりません。
納税者が上記の決定について、なお不服があるときには、30日以内に租税仲裁委員会(Committee of Tax Arbitration)に審査請求をする事が出来る規定となっております(カンボジア税法第122条)。しかし、現時点(2015年6月現在)で租税仲裁委員会は存在しておらず、まだ当該規程は運用が始まっておりません。
また、税法上、租税仲裁委員会によってなされた裁決について、納税者がなお不服がある時は、裁決の通知書を受領してから30日以内に、裁判所(Court)へ訴えを提起する事が出来ます(カンボジア税法第124条)。訴えを提起する際には、訴えの対象である処分における課税額及び加算税、延滞利息に相当する金額を、国庫に供託しなければなりません。
以上はカンボジア税法上での税務署による追徴課税を受けた場合の不服申立に関する概略ですが、租税仲裁委員会は未設立で、税務訴訟も殆ど行われていない現状があり、税務当局の徴税能力の強化にあたっては、これらの納税者の権利を守る制度の運用も重要と考えられます。