カンボジアにも日本と同様に事業所得税(Tax on Profit)という法人税にあたる税金があります。企業の1年間の儲けに対して、税率を乗じて計算する仕組みになっているのも日本と同じです。カンボジアでは税務上の年度(課税年度)は原則1月~12月になっていまして、その場合3月末迄に前年度の所得及びそこから事業所得税額を計算し、申告及び税金の納付を行う決まりとなっています。
税額計算の元となる企業の1年間の儲けの計算は、いわゆる簿記がベースになっています。カンボジア税法第6条第2項では、収益は支払のタイミングにかかわらず稼得された時点で記録すること、と規定されており、会計記録は日本と同様、発生主義ベースである必要があります。
カンボジアの年次事業所得税申告書(Annual Profit Tax Return)では、上記の会計上の利益から、さらに調整を行って、税務上の利益である課税所得を計算し、この課税所得に法人であれば20%、個人事業者であれば、0%~20%の累進税率を乗じ、税金が計算されます。もし、その年赤字で利益が出ていない場合は、多くの場合、年次申告に伴う納税は発生しないか、少額となります。
カンボジアに特徴的なのは、前払事業所得税(Prepayment of Profit Tax)という、毎月税金を前払いする制度があることです。これは毎月、翌月15日迄に前月の売上の1%を納税するもので、前払いですので、年次申告時に計算された事業所得税額から、すでに前払いされている分として差し引くことができます。但し、もし差し引く対象である事業所得税額が無かったとしても、この前払分が還付される事は無く、ミニマム税として確定します。従いまして、カンボジアでは利益が無くとも(赤字であっても)、売上の1%は最低、税金として発生するため、売上額が大きく、利益率が低い業態には不利と言えます。
1年間の利益に対して税金がかかるという理解で間違いありませんが、会計上の利益と税務上の利益である課税所得は少々異なります。例えば、飲食費用や遊興費用は会計上は費用ですが、税務上は費用と認められない為、そこで会計上の費用と税務上の費用(損金)で差異が出ます。その他にも寄附金や支払利息、会社負担で支払った源泉税、引当金等、全額もしくは一部が税務上費用と認められない費用があります。この税務上認められない費用が大きくなればなるほど、税務上の利益(課税所得)が大きくなり、支払うべき税額が大きくなります。
課税所得に税率を乗じて算出された金額から、前述の前払事業所得税、利息受取時等に差し引かれた源泉税額、外国税額等を差し引き、最終的な納税額が算出されます。
この事業所得税の税額を抑えるためには、費用発生時には請求書や領収書等のエビデンス(取引証憑)を残しておく事、源泉税は自社負担では支払わない事等々、日々のマネジメントが重要になります。
事業が軌道に乗り、利益が大きくなればなるほど、必然的にこの事業所得税額も大きくなっていきますので、気を払う必要があります。