他国に本拠を有する法人や居住する個人を、一般に税法上非居住者と呼びますが(各国税法それぞれ規定があります)、事業運営上、非居住者に対して支払いをする際に、どのような支払いについて源泉徴収をし、納税をしなければならないか(源泉税の対象となるか)、については、各国の税法にそれぞれ規定があり、カンボジア税法にも規定があります。
まず、源泉税は、「所得」税ですので、その支払が、支払を受け取る非居住者にとって所得でなければ源泉税の対象になりません。ですので、借入金や立替金の返済、資本金の払い込み等で、非居住者に対して支払をする際は、源泉税の対象になりません。
二つ目に、源泉税は、「カンボジア国内源泉所得」について対象となります。カンボジア国内から非居住者への支払いについて、その支払(所得)がカンボジア国内で稼得されたもので無ければ、カンボジア政府が税金を取る権利がありません。カンボジア税法上、このカンボジア国内で稼得されたもの(カンボジア国内源泉所得)についての規定があります。
三つ目に、すべてのカンボジア国内源泉所得の支払いが源泉税の対象となるわけでは無く、その中の一部であり、カンボジア税法第26条にその対象が規定されています。一般に、非居住者による自発的な申告納税が期待できない所得について、源泉徴収の対象(源泉税の対象)とする事が各国税法上多いです。
カンボジア税法第26条では、源泉税の対象である支払(所得)について、以下のとおり規定しています。
a. 利息
b. ロイヤリティ、賃借料、その他資産の使用に関連する支払
c. 経済財政省の省令(Prakas)に規定する経営・技術サービスに対する支払
d. 剰余金の配当、分配
従いまして、上記の支払い(上記がカンボジア国内源泉所得である場合のみ)をする時にのみ、源泉徴収、源泉税の支払いが必要で、他は必要ありません。
しかし、上記のc. 経済財政省の省令に規定する経営・技術サービスに対する支払、については、現状具体的な定義規定が無い上、税務当局は非常に幅広い解釈を行なっており、問題となっています。
非居住者が申告納税をする仕組みが整っておらず徴税が不十分である一方、源泉徴収義務、源泉税の課税については合理的でない運用が目立ち、非居住者に対する課税の仕組みの再構築が今後のカンボジア税務当局にとっての課題と思われます。