カンボジア子会社のタックスヘイブン対策税制適用の可能性

  日本の法人税法上、法人税が無い又は税率が低い国に所在する子会社を利用した租税回避行為を防止する事を目的として、その子会社の所得を日本の親会社の所得と合算して課税する制度があり、タックスヘイブン対策税制と呼ばれています。このタックスヘイブン対策税制上、子会社が法人税率20%以下の国に所在あるいは法人税率が20%以下となるような優遇税制措置を受けている、等の状況がある場合、タックスヘイブン対策税制上の「特定外国子会社等」に該当し、子会社の所得の合算が必要となる可能性があります。

 カンボジアの法人税の税率は20%であり、所得を課税標準とする他の税がありません為、基本的にタックスヘイブン対策税制の対象となり、自社の子会社がこのタックスヘイブン対策税制の適用を受けるかどうかの検討を行う必要があります。

 タックスヘイブン対策税制の主眼は法人税が存在しない国や低税率国にペーパーカンパニーを保有し、そのペーパーカンパニーに所得を移転、留保させる事で、不当に租税負担を回避する事を防止する事にあります。従いまして、その所在地国での事業を行う目的で法人を設立し、実際に事業を行っている限り、適用されません。この判定にあたって、適用除外要件という4つの要件(事業基準、実体基準、管理支配基準、非関連者基準又は所在地国基準)の全てを満たすかどうか、が検討されます。

 その上で、カンボジア子会社が上記要件を満たし、合算課税の適用を回避できるとしても、資産性所得(剰余金の配当等、債券利子、債券の償還差益、株式等の譲渡所得等、能動的な事業活動に基づかない所得)については、合算の対象となります。ただ、その所得が少額である場合の除外基準があり、事業年度の資産性所得(持分割合に対応する部分)が1,000万円以下である又は税引前所得の5%以下である場合は、適用されません。

 事業活動と直接の関係の無い多額の資産性所得を得ているようなケースでは、具体的な検討が必要になるものと思われます。