カンボジア子会社勤務の駐在員の親子会社間の給与負担決定上の留意点

 1年を通じて、カンボジア子会社で勤務している駐在員の給与については、その給与はカンボジア子会社の事業の為の費用であり、原則カンボジア子会社の費用とすべきと考えられます。

 しかし、カンボジア子会社の経営状況によっては、駐在員への給与全額を負担する事が出来ない場合等もあります。そこで、日本の税法は、出向元である日本の本社による海外子会社への出向者の給与負担を、ある程度迄許容しています。

 法人税基本通達9-2-47では、「出向元法人が出向先法人との給与条件の較差を補てんするため出向者に対して支給した給与の額は、当該出向元法人の損金の額に算入する。」としています。これは、カンボジア子会社での給与水準が日本と違う場合、その給与水準との較差については、日本本社で負担をしても、日本本社での法人税計算上損金として認める、との理解となります。

 なお、この給与条件の較差の補填については、金額や割合的な基準はありませんが、補填の限度を超えていると日本の税務当局からみなされた場合は、日本本社での法人税計算上、国外関連者に対する寄附金とみなされて、全額損金不算入となり、税務上のインパクトは大きいものとなります。カンボジア子会社負担額が適正であり、その較差について日本本社が負担しているという事を、カンボジアの賃金水準についての公的な統計データ等に基づいて、説明できるようにしておく必要があります。

 ところで、カンボジア子会社勤務の駐在員の給与については、カンボジア子会社にて負担すべきではありますが、日本での給与支払が無くなった場合、日本本社との雇用契約は継続していないとみなされ、厚生年金等の社会保険の被保険者資格を喪失する可能性が高くなりますので、駐在員への福利厚生上、本社と子会社双方で給与支給をする事が一般的となっています。